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2012年6月18日 (月)

ピアスの「トムは真夜中の庭で」を読んでみて

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▲写真はカナダ・ノバスコシア州で見つけたキルト

近頃、子供のためのファンタジーに惹かれています。
イギリスの作家・フィリッパ・ピアスの「トムは真夜中の庭で」をご紹介しましょう。時間をテーマにした幻想ファンタジーです。

イギリス・ケンブリッジ州グレート・シェルフォードに生まれた作者は、祖父の代から製粉業を営む名家の出身。ケンブリッジ大学を卒業後BBCで学校放送を担当し、後に「ハヤ号セイ川をいく」で作家デビューします。本作品は、カーネギー賞を受賞した作品です。

ストーリーは、夏休みを弟のピーターと楽しく過ごそうと思っていたトムに、突然訪れる不幸から始まります。なんと、ピーターがはしかにかかって、自分だけおばさんの家に預けられることになってしまいます。子供のいないおばさん夫婦と一緒に過ごす時間がいかに退屈でつまらないものか、トムはすぐに思い知るのですが、そこには予想もしない不思議な世界が待っていました。

おばさんの家は、イギリス・イーリーの街を過ぎ、住宅が立ち並ぶカールスフォドの一画にあります。昔は大邸宅だったその建物には、アパートには不釣り合いな広いホールがあって、大きな箱形の古時計が置かれていました。おばさんから「絶対触っちゃだめ、大家さんに怒られますよ」とたしなめられたのですが、おばさんからの必要以上のもてなしと運動不足で、不眠症にかかってしまったトム。チックタックと時を刻む古時計が夜中、ありもしない13時を打つと、トムはその時計の音に導かれるようにベッドを抜け出していきます。そして、ホールの裏のドアから外へ遊びにいくようになるのですが、そこに広がっていたのは、想像だにしない大庭園でした。アパートの裏手に、そんな庭園などなかったはずなのに……。

トムはそこで、少女パティに出会います。両親を亡くし、いとこたちと暮らす孤独なパティ。日を追うごとに少女は成長し、大人へと成長していきます。やがて二人は庭園を抜け出し、結氷した川をスケートで滑り遊ぶようになるのですが、それは夢か幻か、はたまた現実の世界なのか。ストーリーはやがてパティの人生へも入っていきます。

やがて、ピーターのはしかも直り、トムは家に帰ることになるのですが、庭園でパティと過ごす時間がとても大切なものになっていたトムは、もう少しおばさんの家で過ごしたいと言い出します。すっかり夜の世界のとりこになってしまったトム。パティとも不思議な縁で結ばれ、その縁をつなげていくトムでしたが、パティとはいったい誰で、どうしてトムは、パティと出会うことになったのか?

本書の幻想的なストーリーは、ディティールを緻密に描くことで成り立っています。もの悲しく、思春期の少年少女の孤独と心情が、幻想的な世界と相まって絵のように展開します。が、ややもすると単調。ドラマチックな展開がお好みの読者には、物足りなさが残るかもしれません。

しかし、最後のどんでん返しを読んで「なるほど、こういうことだったのか」と納得する筋立てになっています。だから、最後までご一読を!
小学校5~6年生向きの本書ですが、大人が読んでも楽しいファンタジーです。

■児童書・ファンタジー
トムは真夜中の庭で
フィリッパ・ピアス(イギリス)
高杉一郎訳
岩波少年文庫刊

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